モニタに不気味な地下の映像と二つの人影が映し出された。
学園のホストコンピュータが管理している監視カメラの映像である。
後姿は教師の一人のようだった。歩み寄る方の影は獣のような異形の外見をしていた。

「地下にこんな所があったなんて・・・? 誰?この人・・」
驚く茜はモニタを凝視していた。

「ヒッ、ヒッ、ヒッ、お待ちしておりました」
後姿の男はちょっと肩をすくめるような姿勢で迎えた。



「新種の開発は順調かな、博士・・・」
その化け物の両腕には一人の女子生徒が抱えられていた。

「ヒッ、ヒッ、ヒッ、それはもう、直々のご指示ですから・・・
ところで、その娘を私にどうせよとおっしゃるのですか?」

不気味な笑いを浮かべながら男は聞き返した。



ドサッ
化け物は気を失っている女子生徒の身体を乱暴に床へ降ろした。

「この娘はまだ私を受け入れる用意が出来ておらぬ、
お前の知識と技でしっかり調教してやってくれ」




床に横たわる少女の顔を監視カメラが撮らえた次の瞬間、茜の眼が大きく見開かれた。

「彩ちゃんッ!」

それはクラスメートの彩だった。
茜は視覚からのみ知覚し得るこの事態が実際にはどれくらい深刻で、かつどれくらい身近な事なのかをようやく認識することとなった。

「では任せたぞ、儀式まで時間はもう充分には無い。
3、4日の間に済ませておかねばならぬぞ」


「ヒッ、ヒッ、ヒッ、かしこまりました王子」

化け物は用を済ませるとその大きな肢体を反転させ、その場を立ち去った
その後姿を見送る「博士と呼ばれた男」は監視カメラの異常な動きに「ハッ」と気付いた



「誰じゃ、覗き見しておる奴は!!!」

映像はその声の直後にプツッと切れた



「茜さん、これは・・・作り事でなく・・・、
現実に・・・起こって・・・い・・・る・・・
事・・・なので・・・す」


「私にどうしろっていうの?」

「バック・・アップ・・・、消される・・・前に・・・・・、
私の・・・存在・・そのもの・・・が・・・・・・」


「あんたの存在ってなんなのよ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・」

「あー、終わっちゃったのねぇ・・・・・、ふぅ・・・、
自分で調べるしかないって感じなのかなぁ・・・、
まぁ、この学園のホストに潜ればきっと何かわかるでしょう」


茜はパソコンを閉じ、席を立つと図書室へ向かった。
図書室の端末を使ってホストコンピュータをハッキングするために。




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