扉の前でたたずんでいる彩(AYA)。
まだ、どうすれば良いか迷っていた。すると、
「彩・・・」
その声に振り返ると麻弥(MAYA)が立っていた。
向かい合う姉妹。
「お姉ちゃん・・・」
「その扉を自分の手で開けてはダメ」
「なぜ・・・」
「全てがわかったの。
深層心理の最深部で記憶を逆行してきたから」
「そう・・・、でも私だって何も知らないわけではないわ
私達の本当の父親・・・、自分達が何のために生まれて来たか・・・」
「だけど、それは私達が望んでそうなったわけじゃない。
私達には私達の生き方を選択する自由が残されてるはずよ」
「気安めは言わないで。私は嫉妬してるのよ。
なぜ私ではなくてお姉さんが魔王復活の巫女に選ばれたのか・・・。
出来ることなら代わって欲しい!」
「・・・暗示にかけられてるのね。
彩は自分が自分でなくなるのが悔しいとは思わないの?」
「でも、それは光栄な事でしょう。
こんな愚かな人類なら滅んだほうがいいし、その役に立てるのだったら
これ以上の喜びはないわ」
「・・・・・馬鹿ね。生きていなければ何もないのよ。
どんなに愚かでも生きているから意味があるし、
より良く生きて行こうとする希望が持てる。
全ての生き物は不完全だからこそ存在意義があるのよ」
「・・・・・・」
「私は生まれてすぐ、実の母親に殺されそうになった」
「え・・・・・」
「潜在意識に残ったそんな過去が私にいつも
『何のために生まれてきたのか』を問い続けさせてきた。
今でもその答えは出せないけれど、
少なくとも『人類を滅ぼす道具になるため生まれてきた』なんてのは
絶対に嫌っ!」
涙がこみあげてくる麻弥(MAYA)。彩(AYA)の手を取る。
「私は生きていたい。どんなに呪われていても・・・。
たとえ自分が『罪深い』とされる人類と『忌わしい種族』の間に生まれた
混血だったとしても・・・」
麻弥の頬をつたう涙の雫が彩の手の上に落ちた。彩の目も潤んでいる。
「けれど彩、私は貴方に代わってもらってまで生き延びたいとは思わない。
私が生贄になることで彩が彩のままでいられるならば、そのために
私は今日まで生きて来たと思えるから・・・」
「・・・・・」
「貴方は望まないかもしれないけれど
私が経験し、得てきた能力を全て彩に預けるわ。
全く同じ遺伝子を持つ者同士だからこそ可能な事だけど・・・。
そうすれば魔王の完全復活も防げるかもしれない。」
「お姉ちゃん・・・・」
「じゃあ彩、私の分まで生きてね。
サヨナラ」
「待って・・・・」
麻弥の姿が消える。
やがて彩の全身が光に包まれていく。
「私、今までなにしてたの? ここはどこ?」
彩は正気に戻った。生贄の柱にくくりつけられた状態で・・・。
今までの全てが夢だったような不思議な感覚が彼女を包んでいた。
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