瀬戸内海を飲み込んだ黒色球体は一転して収縮を始めた。
6月6日午前6時
外界の重力の影響を受けない異空間内部で浮遊する魔界の島は、
逆さまになって地球の中心方向へピラミッド頂上を向けていた。
「集えし闇の創造物よ、今、我とひとつになり魔王を迎えるのだ。
さあ、闇の王。我が父にして母なる大地の源よ。今時は来たれり」
仲間達の魂を吸収した闇の王子は両手を大地に向かって高くかかげ
魔王に呼びかけた。
その様子を驚愕の表情で見つめている唯と彩。翔も目覚めた。
そこへ突然、光る球体が出現した。
「うっ、なんだこの光りは・・・」
光球の中にはエクリプスソード(闇の剣)が輝いていた。
「ルシエル! なぜここに」
「久しぶりだな、王子。今日こそ決着をつけよう」
「そうか、貴様こんな所に飛ばされていたわけか」
「そうとも予定通り事が運んでくれて嬉しいよ」
「フッ・・・、その予定には当然お前がここで最後を迎えることも
盛り込まれているのだろうな」
「あいにく1万年も眠らされていたので
無駄なスケジュールを組めるほど暇じゃあないよ」
「グウグウ眠っておいて笑わせやがる。
まずお前を剣に変えてやった礼から挨拶を始めるのが礼儀ってもんだぞ・・・。
だが、なぜそうまでして人間を助けようとする。
お前もこの地球を滅ぼしたいのか?」
「とんでもない。ただ、人間の存在そのものに罪は無い。
中には好きになれる人間が居るっていう事実が重要なのさ」
エクリプスソードは翔の上へ降りてきて彼の手に掛けられた錠を壊した。
「マスター、これが本当に最後の戦いです。
こんなチビの剣にされてしまった私には信頼できるパートナーが必要です。
方法はわかっていますね」
「ああ、わかってるさ。
やってやるぜ、俺達の未来のために!」
翔はエクリプスソードを手にした。
「フォッ、フォッ、フォッ
お前が手に持つ異端の剣は、かつて私が最も恐れた反逆者である。
私にとってこれはシナリオにない出来事だ。
ならば、私も全力でシナリオの修正を行わねばなるまい」
グオオオオッ
闇の王子が姿を変化させ始め、みるみる間に異様で巨大な怪物に変身していった。
その怪物はジリジリと接近してきた。
「ちょっとヤバくないかこの雰囲気・・・、
奴のほうが格段に強そうだぞ」
剣に語りかける翔。
「フォッ、フォッ、愚か者め、私に勝てると思っていたのか。
お前達など暗黒世界の塵にしてくれるわ」
怪物の凄まじいパワーに翔はタイミングをつかめないでいた。
まさに、怪物が攻撃を仕掛けようとしたその時・・・。
「光りのチカラよ、盾となり彼を護り給え」
唯が呪文を唱え翔の前方に魔法障壁が張られた。
「くっ・・・、唯か、お前がいるのを忘れておったわ」
「その人達をキズつけないで!」
彩からも強いチカラが発っせられて怪物の動きを止めた。
「ナニッ、なぜお前までが奴らにチカラを貸す?
麻弥、お前が何かしたのか? 夢の中で暗示を解いたのだな!」
ウオオオオオッ!
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