「くそっ、倒しても倒してもキリがない。
絵美(EMI)ちゃん、あんたの空間移動能力で
目的地へポンと飛べないの?」


長めの赤毛を振り乱しながら、戦いの最中に話しかける理沙(LISA)。

「そんな無理言わないでよ。
一度行った場所でなきゃ移動できないの知ってるでしょ」


絵美(EMI)はイメージ可能な空間へ瞬間移動できる
特殊能力の持ち主だった。

「ふう、いざって時に役に立たない能力なんだねえ。それって。
目的の部屋はすぐソコだっていうのに・・・」


キイイイイイン!!!

突然ふたりの耳に金属音が響いた。そして、
その後すぐ、どこからともなく女性の声が聞こえてきた。



「絵美(EMI)さん聞こえますか?」

「ハッ」

ビクッとして日本刀を止めるEMI。

「唯(YUI)さんですね。この奥で私達を待っていると言ってた。」

「そう、唯(YUI)です。でも、もう私はダメです・・・・。
あなた方と、生きて、お会いできそうにありません」


「何言ってんのさ。
それじゃあ、私達が何のために今まで
頑張ってきたのか、わかんないじゃないか」

と吐き捨てる理沙(LISA)。

「しかし、残念ながら・・・、もう・・・・・。
実は、お願いがあるのですが、
海の上に強い味方になってくれる人がボートで流されています。
絵美(EMI)さんのチカラで彼女を連れてきて協力し合ってもらえませんか?」


「海の上なら、なんとかイメージして探せると思うけど・・・、
今の体力では向こうへ飛べても連れて帰れるかどうか・・・」


「そんなに悪い状況なのですか・・・?
しかし、彼女が私達に残された最後の希望です。
気力を振り絞って・・・。
何とか不可能を可能にしていただけませんか?
私は、もう・・・、これで・・・・・」

YUIの言葉は、ここで途絶えた。

「おいっ!」
宙を仰いで呼びかける理沙(LISA)。しかし、返事がない。

「どうする?」

「こんな中であなた一人を置いて飛ぶなんてできないよ」

「・・・私の、私の心配なんか、してるの?
 ・・・・・笑わせないでっ。
手負いのあんたなんかいなくなったほうが、私は気軽に戦えるってものよ。
あんたが帰って来るまで絶対ひとりで戦い抜いてみせるから・・・。
早く飛びな!」




見つめあう絵美(EMI)の瞳がうるんでいる。
彼女を安心させるための
精一杯の強がりであることは明らかだった。

「・・・・、じゃあ、行くよ」

「ああ・・・」

「必ず帰ってくる・・。それまでは戦い抜いてくれるんだよね。絶対に」

「絶対だ。約束する」

ピシィィィィィッ!!!

ラップ音とともに消え去った絵美(EMI)。
ひとり、魔物の群れの中に取り残された理沙(LISA)。

「さあっ、やられたい奴。かかってきなっ!」



ピキィィィッ!

閃光が走ると同時に絵美(EMI)が、MAYAの乗ったボートの上に現われた。



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