校舎の廊下を階段の方向へむかおうとしている彩の前方に一人の少女が現われた。年齢は10歳前後のまだ小さな女の子だった。その少女の表情は無感情で少し冷たさを感じさせる不思議な雰囲気を漂わせていた。

「そこで何してるの?」

「ここに居てはダメ、早く逃げて」

彩はハッとした。 ( この子、私に忠告している。何か知っているんだ。それにしても、こんな小さな子が何故この島にいるのだろうか ) 彩は自分の頭の中では論理的結論が得られそうにないので、少女に質問した。

「あなたは誰? 何か知っているの?」

「出口は自分で見つけなくてはならない」

「出口? ここは島よ。船に乗るしか方法はないはず」


このシーン「 真・魔界島 - 豪華版 -」ではアニメGIFで喋ります

「出口を探すことは同時に入口を探すことでもある」

「何を言ってるのかわからない! この島で何が起きてるの?」

「答えは知ってるはずよ、忘れているだけ」

「え・・・・・?」

「時間はあまりない。早くここを抜け出し、自分自身を取り戻して。それが人類の未来に希望をつなぐことでもあるのです・・・」

そう言い残して少女の姿は消えた。ちょうど映し出されたホログラムがフェードアウトしたかのように。「幽霊でも見たのだろうか」彩は困惑の表情でその場に立ち尽くしてしまった。その時、

「藤谷さん! 大丈夫?」



あの職員室から北条 唯が駆け出して来た。その時、唯の目は開かれていた。

「あ、北条さん、さっきはありがとう。・・・この島は、先生達はどうなっちゃったの?」

「この島は悪魔達の島なの。信じられないでしょうけど」

「・・・・・」絶句する彩。

「私はあなたを守るためにここへ来ました」

「私を・・・、守る・・・?」

「そうです。さあ、一緒に逃げましょう」

彩は唯に手を引かれるまま、着いて走った。そうする他ないと彩には思われた。
二人は校舎の地下へ向かって階段をくだって行った。

「ねえ・・・、どうして地下へ降りるの・・・?」不安げな彩。

「地下に安全な抜け穴があるのです。」

暗くてほとんど回りが見えない地下の回廊をしばらく走ると扉の前に行き着いた。二人で力を合わせて鉄製の重い扉を開いた。中は真っ暗のようだった。強い不安に駆られながらも彩は踏み込んだ。彩が地下室へ数歩入って行った直後、ガッシャアッ! 重い扉の閉まる音が背後で響いた。その瞬間、彩の周囲を闇が包んだ。

「北条さん・・・どこ? 暗くて何も見えない・・・」

応答がなかった。不安と緊張に襲われながらも彩は、半歩づつ足元を確かめながら前進した。コツッ 彼女のつまさきが何かに突き当たった。暗さに目が慣れてきてよく目を凝らすと前方に円形の祭壇があることに気づいた。そしてその祭壇の上にはひとりの女子生徒が鎖でつながれているのがわかった。それはクラスメートの篠崎 久美だった。


このシーン「 真・魔界島 - 豪華版 -」ではパンチラで動きます

「久美!!!」

「あ、彩・・・、助けて・・・」

久美の声は恐怖に震えていた。それも迂闊には声も出せないといった感じの細くて小さな声だった。

「ここは何なの!? 唯! あなた、何のために!」

「あなたが言うとは私のことかしら? それとも・・・」

声のする方を向くとそこには教師の坂本の顔があった。しかしよく見るとそれは大人びた顔だちの唯のようでもあった。彼女は壁のランプに火を灯した。

「それとも、私にとり憑かれる前のお友達の唯のことかしら」

それは制服を着た坂本であった。さっきまで一緒に走っていたのは唯ではなく、唯にとり憑いた坂本だったのである。彩は幻覚を見せられていたのだった。

「そ、そんな・・・」

「北条さんと私とはもともと遺伝子情報を共有している者同士だったの。私の方がサタム・ノイヤ様の染色体を含有しているため、彼女より優れ、成長も速かったけど・・・。世界のどこかに自分の分身がいるなんてどんな気分か貴方には想像もつかないでしょうね。でも、これでやっとスッキリすることができたってわけ」

よく考えてみれば唯が目を開けた姿を一度も見たことがなかったから気づかなかっただけで、二人の容姿は酷似していた。さらにその女教師のフルネームも「坂本 唯」だったことも彩は思い出した。

「さあ、儀式を始めましょう。私の役目はこの島を魔族で満たし、紋章を持つ巫女とともにサタム・ノイヤ様をお迎えすること」

「サタム・ノイヤ・・・?」

TO BE CONTINUED...




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